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2020-11-28 22:50
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訓練艦隊に属する2隻の戦艦が、悪天候の中、軍事演習のため数日間にわたり航海を続けていた。私は先頭を行く戦艦のブリッジで夕暮れを迎えた。視界が悪く断片的に霧がかかっていたため、艦長もブリッジに残り、状況を見守っていた。
暗くなってから闇もなく、ブリッジの見張りが次のように報告した。
「艦首の右舷側の進路に光が見えます」
「停止しているのか、船尾の方向に動いているのか」
と艦長。
見張りの答えは、
「停止しています、艦長」
つまり、その船はこちらの進路上にあり、衝突の危険があるということだった。
艦長は信号手に命じた。
「その船に対し、信号を出せ。衝突の危険があるため、20度進路を変更せよ、と」
相手からの信号が返ってきた。
「そちらの方が20度進路を変えるよう助言する」
艦長は再び命令した。
「信号を送れ。私は艦長だ。20度進路を変えるように」
すると、
「こちらは2等水兵だ。そちらの方こそ20度進路を変えるように命令する」
と返事が返ってきた。
艦長は怒り出し、
「信号を送れ。こちらは戦艦だ。20度進路を変えろ」
と叫んだ。
点滅する光の信号が返ってきた。
「こちらは灯台である」
我々は進路を変えた。
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