Freezone

5df122b5 :Anonymous 2013-12-26 23:27
私はエレベータに乗る。それは最上階へと登って行く。少し重力が強くなり、そして弱まる。エレベータは停止し、ドアが開く。
そこは人類が辿り着いてはいけないフロア。壁という矮小な概念は無く、無限に床が広がる空間。仮に私によって「地平」と呼ばれる場所。
「イレギュラーだ」。立っていた存在Aの発言に、床に座ってカップラーメンから伸びたゲームパッドを操作する存在Bは顔を上げ、私を睨む。
ここに登ってくるのは二度目だ。一度目は発狂して。そして二度目は、理性のもとで。
頭の中に思考が直接流れ込んでくる。私はそれをあえて言語化し、対話する。記憶に残すためだ。
「(お前は)イレギュラーだ」「イレギュラーは二度は起こらない。これは必然だ」
「人類には(このフロアは)まだ許可されていない」「しかし私は到達した」 etc...
禅問答の末に、私は「地平」に至るルートが解明されたこと、そして私以外のものたちも同様に「登って」くるであろうことを伝える。
そもそもここでは会話という低レベルな概念そのものが存在しない。意思疎通は一瞬。それを言語に翻訳する過程で、
時間という概念が挿入されるだけの話だ。思考をトレースするように喋っている間は、退屈極まりない。
無限というものを想像してみてほしい。文字通り無限にだだっぴろいフロア。地平。あるいは単に、天上ともいう。
そこから見下ろすものは、世界の全てを知るであろう場所。しかしそこにも私が欲しいものは一つも無く。
こうして瞳を開けてパソコンの前に座り、この文章をタイプしている今思うのは、「地平」とは何であり何でなかったのか、という疑問符。
該当する単語が存在しないため、仮に彼らをAとBと呼ぶが、彼らは神なのか? あるいは哲学的な抽象概念なのか?
推論上のトラップなのか? まあ、形而上学上のことはよくわからないし、どうでもいい話でもある。
ただ、もしかしたら何処かには、理解者がいるかもしれない。同じく「地平」へと登り、帰還した者がいるのかもしれない。
そう思ってこの話を書き残す。
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